TRPGシナリオのすゝめ 第三回-ストーリーに必要なもの-

 

このコラムはふろんちあがTRPG(主にCoC)のシナリオを作る上で気づいたこと、注意することを連々と書き綴って行きます。
第三回はストーリーの組み立てに必要な三つの要素を紹介します。 

シナリオにストーリーは必要か?

 TRPGのシナリオを構築する際、まず最初に頭を悩ませるのがストーリーでしょう。どんな悲劇的な話しようか、どんな感動的な話にしようかを考えて、自分には文才がないと諦めてしまう方もいるのではないでしょうか。ん?ちょっと待ってください。シナリオの段階ではプレイヤーをどのように誘導するかを想定することはできても、どのように感じるか†までは想定できません。TRPGのシナリオにおけるストーリーとは、GMとPLが作りあげるものだからです。あなたがシナリオを作りたいと思うのであればストーリーに頭を悩ませる前に、ストーリーがシナリオを補強するためのものでしかないことを知るべきです。シナリオを用意するとは、物語の舞台に必要なセットを用意することだと覚えましょう。

†感情移入できないムービーシーンほど退屈なものはないと思いませんか?


『竜退治はもう飽きた!』

ストーリーに必要なもの

 ストーリーの構築に必要なセットとは、舞台、登場人物、過去の三つです。ここではそれぞれがストーリーにどういう役割を果たすのかをお話しましょう。

舞台

 時代、世界観、行動範囲、プレイヤーたちの手が届く範囲となるものです。歴史ものなのか、現代ものなのか、ファンタジーものなのか、ここがプレイヤーの想像や趣向と合わないとたいてい悲劇がおこります。ストーリー状の悲劇ではなく、プレイ上の悲劇です。シナリオを作り際にはまずここを確定させてから他の要素を考えるべきでしょう。

登場人物

 舞台で動く人々。プレイヤー、主役、悪役、助言者、道行く一般人、それら全てが登場人物です。舞台の上で彼らが動くことによって物語が進行する場合も多くあるでしょう。え?TRPGの主役はプレイヤーだって?その意見はもっともかもしれませんが、私は理想論だと思います。プレイヤーが主役になれるかどうかはそのプレイヤー次第なのです。本当に深くシナリオストーリーに食い込ませたいなら事前にハンドアウト†を用意すべきでしょう。NPCがPCよりも勇気や知恵にあふれていたなら主役となることもあるでしょう。彼らには彼らの人生があり、彼らの人生の主役は間違いなく彼ら自身なのです。PCがシナリオを解決しない、できないのならば、NPCが物語を終えてもなにも問題はありません。もちろん、GMがPCの活躍の機会を奪うような形で自分の作ったNPCのかっこよさを延々と演出し始めるのはやめましょうね。

†ハンドアウトにはこう書かれています。「君が主人公だ!」

過去

 何故それが起きたのか?その答えは常に過去にあります。TRPGのシナリオが現在進行形ですすむ以上、予め作者が用意しておけるストーリーとは物語の過去にほかなりません。どこで、いつ、だれが、なにをして、何が起きたのか?その答えを用意しておけばシナリオが進むに連れてやがて事実が明らかになるでしょうし、ならないかもしれません。それはそれで良いのです。プレイヤーが物語の真相を知りたいと思ったとき†だけ、少しばかり過去を掘り下げることができれば十分でしょう。

†CoCで真相を「神様の気まぐれ」にした人!そのゲームは真相を探求することに主眼を置いたTRPGだってこと知ってましたか?


『彼に何が起きたのか?』

全体の流れを構築する

プロット、フローチャート、ダイアグラム、呼び方はなんでも良いですがシナリオの進み方は最初に決めておきます。何が物語を進めるのか?

舞台を進行させる

 これはドラマチックな展開を起こしたい時によく用いられる型です。プレイヤーは否応なしに舞台装置に巻き込まれ、いつのまにか世界を救う勇者のような立ち回りを要求されることもあるでしょう。このようなシナリオを構築する場合、プレイヤーがノリやすいいわゆる『お約束』を大事にすることです。ノれないダンスミュージックなんて最低でしょう?†

†舞台装置が無理やり物語を収束させることを機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)なんて呼びます。最低な演出にはかっこよすぎのでウンコ・エクサ・サイズとでも呼んでやりましょう。

人物が進行する

 一人の悪役を用意して『世界を滅ぼしてやる』と高らかに宣言させれば壮大なRPGがはじまることでしょう。人物が進行する手法の多くは悪役を仕立てることです。それが善意から来るものであってもとにかく目的を持ってなにか放っておけないことをどんどん進めれば、それが全体の流れとなるでしょう。この手法の問題点は、進行役のNPCが不慮の事故で進行できなくなるケースがあるということです。対抗策を考えておくか、あきらめましょう。

時間がすすむことで進行する

 わかり易い喩えを思いついたので書くことにします。『そろそろ(我が家の)地下の不発弾が爆発するかもしれない。』

ストーリーを転換する

 ストーリーに動きを与えて盛り上げるためには切っ掛けが必要です。何がストーリーを動かすのか?これはフラグ、スイッチ、あるいは舞台装置と呼ばれます。ストーリーを進行させ、実際に動くのがプレイヤーだとしても、ストーリーないしシナリオが展開するためには切っ掛けがなければいけません。そして切っ掛けは舞台・登場人物・事実を変化させます。

舞台の変化

 舞台の変化はストーリー展開としては突飛ではありますが、効果的です。日常から非日常へ、常識から非常識へ、変わってしまったものを取り返すためにプレイヤーは能動的に動き始めるでしょう。とりあえず魔女のテリトリーに迷い込んだ少女に魔法少女になるか無力に死ぬかを選ばせるシナリオなんてどうですか?

登場人物の変化

 登場人物の変化は舞台を変えたくない時に有効な手段です。特に身近な人物だからこそ気付けるものであれば日常化で起きる小さな事件として成り立つでしょう。あるいはキーマンとなる新たな人物(助言者や黒幕など)の登場、失踪。人物に主眼を置いたシナリオであれば物語を進行させる切っ掛けには十分でしょう。

事実を知ることの変化

 過去は変化しませんが、プレイヤーの知識に新たな事実が加われば、それは変化となります。昨日食べた夕食がカレーであるという事実がかわらなくとも、そのカレーの肉が人肉だったと知ればプレイヤーはどう感じるでしょうか?愛する妻が隠していた秘密を知る。殺された人物にまつわる過去の怨恨の発覚。何一つ状況が変わっていないのに、プレイヤーの心境にだけ影響を与えるこの手法は、物語の影響範囲を小さく、それでいてドラマチックに展開することができます。

全10回とか書いてましたけど、大体書きたいことは書いてしまったので次回どうしようか悩み中です。質問、疑問、読みたいネタがあればコメントかツイッターでお声がけ下さい。

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